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日本語教育・再考(Web版)

 

技能実習生や働く外国人に対する日本語指導を考える〈その10〉
〜日本語学習支援者からのよくある質問2〜(2015年5月15日号掲載)

公益社団法人 国際日本語普及協会(AJALT)
地域日本語教育担当理事 関口 明子

「日本語学習支援者からのよくある質問」の2です。


<質問>
 母国料理の店で働いているAさん。来日2年ですが、全く日本語を話すこともできず、厨房と自宅の往復と仕事仲間の同国人と母語で話す日々なので、日本人の社長さんが私の所属している地域の教室に連れてきて「なんとか少しでも日本語がわかるようにしてもらえませんか」と言われました。まず、ひらがなの読み書きを始めたのですが、何を言ってもわからないのでどう進めたらいいでしょうか。

<回答>

1.まず不安を取り除く

 日本語がわからないことへの不安はとても大きいと思います。まず不安を取り除き、安心できるようにすることが大切です。支援側としては「ここではわからなくても大丈夫。自分の国ではないのだからわからなくて当たり前、心配しないでくださいね」と母語で伝えられたら安心するでしょう。でも学習者の母語がわからないことの方が多いですから、その時は上記のカッコ内の気持ちをもって満面の笑顔で迎えてあげてください。その笑顔で「ああ、自分は受け入れられている。ここだったら安心」と思ってもらえると思います。


2.小さな自信を積み上げる

① 身体名称
 すぐにひらがなの読み書き練習にはいらないでください。その前にまず身の周りのものの名前から始めましょう。たとえば支援者が自分の頭を触りながら「あたま」、鼻を触りながら「はな」と言います。次に「あたま」と言いながら相手を見る。学習者が自分の頭を触る。同様に「はな」と進める。つまり音を聞いて理解して、動作をするということから始めるのが一番学習者に負担にならないのです。身体名称の部位を聞いて、頭、鼻を触ったりできてから、次に支援者が自分の部位を指し、学習者が「あたま」と音を発する。先ほどと逆ですね。
 動作を見て学習者が音を発するのは、音を聞いて動作するよりもう一段レベルは上がります。何もわからなかった人が、日本語の音を聞いて口を指したり、頭を指したりできる。そして次に支援者が指した身体部位の名称が言えることで、「わかる、日本語大丈夫かもしれない」と思えたら小さな自信がつきます。

② 身近な物の名前
 ハンカチ、ノート、傘等、学習者の持ち物を使って、①と同様のやり方で行います。最初は音を聞いて理解してものを指す。少しずつものの数を増やす。

③ 自己紹介
 支援者が自分の名札を指しながら「関口です」と言って丁寧に頭を下げるだけの自己紹介。「初めまして、どうぞよろしくお願いします」などはまだ必要ありません。支援者は胸に名札を付けておくといいです。そして学習者に学習者の名札を指しながら自分の名前を言うことを促します。わからないときは学習者の側に立って一緒に言います。

④ 文字指導
 ひらがなの読み方を学んでもらいます。あ行の読みからスタートします。文字カードを作ってカード取りをしながら覚えてもいいですね。これはまず読める文字を少しずつ増やします。それから音と意味を知っている、例えば、「かさ」「あし」などを意味の塊として単語として理解していく。音を聞いて意味がわかっているものの文字の表し方を知る。たくさん読めてから少しずつ書く練習にもっていく。

⑤ 覚えることの負担を取る
 ①②③④と色々なことをしながら、支援内容に変化をもたせることで集中して学習ができます。そして、できる、わかるという小さな自信の積み重ねが大きな自信になっていくと思います。
 全く日本語がわからない学習者に対しても、媒介語を使わずに日本語学習支援ができます。
 その日に必ず覚える必要はありません。色々なことばに触れ、毎回繰り返すことで少しずつ使えるようになっていきますので、覚えることにプレッシャーを与えないことが大切です。
 楽しく頑張りましょう!

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